会期:2009年9月5日(土)~13日(日)
AM10:00~PM6:00
会場:ノイエス朝日 スペース1・2
長野県北佐久郡北御牧村八重原(現・東御市)に勘六山房はある。
水上勉氏は、1991年ここに庵を構え、執筆の傍ら、陶芸、絵画、竹紙漉き、野菜作りなどの生活を送った。
この地での生活は、雑誌「サライ」(小学館)に「折々の散歩道」として300回、13年間にわたり連載され、多くの人々に愛読された。
また、「花畑」「心筋梗塞の前後」「骨壷の話」「竹紙を漉く」などの著作を生み出した。
久しぶりに先生が仕事をしていた部屋に入ると、どこかに厳しく温かい眼差しを感じた。展示作品を一つ一つ選んで、背中を押されるようにして勘六山房を後にした。
水上氏が制作した絵画、書、骨壷。
そして現在、勘六山房で作陶を続ける角りわ子さんの作品。竹を素材に竹紙を漉いている小山久美子さん。
今回の展示については、長女の水上蕗子様のお力添えをいただきました。心よりお礼申し上げます。
勘六山房での水上勉氏の多くの仕事をご覧になっていただき、水上文学の奥の深い文芸の世界に触れていただくことを心より願っています。
ノイエス朝日
水上 勉 略歴
1919(大正8)年 3月8日、福井県大飯郡本郷村字岡田(現福井県大飯郡おおい町)で宮大工の父・水上覚治、母・かんの次男として生まれる
1929(昭和4)年 京都・臨済宗相国寺塔頭瑞春院の徒弟に出され翌々年得度
1932(昭和7)年 瑞春院を脱走、天龍寺派別格地衣笠山等持院の徒弟となる
1936(昭和11)年 花園中学校を卒業。還俗する
1937(昭和12)年 立命館大学文学部国文科に入学、働きながら通学するが退学
1938(昭和13)年 満州に渡り奉天で働くが、喀血し入院
1939(昭和14)年 帰国し若狭で療養。文学書を耽読する
1940(昭和15)年 文学を志し上京
1944(昭和19)年 若狭へ疎開。分教場の助教となる
1945(昭和20)年 助教を辞め、上京
1946(昭和21)年 虹書房を起こす。信州・松本に文学の師となる宇野浩二を訪ねる
1948(昭和23)年 『フライパンの歌』刊行、ベストセラーに
1959(昭和34)年 『霧と影』刊行、新社会派推理小説として注目される
1961(昭和36)年 『海の牙』により第14回探偵作家クラブ賞受賞。『雁の寺』で第45回直木賞受賞
1962(昭和37)年 『雁の寺』が映画化される。『飢餓海峡』、『五番町夕霧楼』、『越後つついし親不知』を発表
1963(昭和38)年 『越前竹人形』刊行。『拝啓池田総理大臣殿』を発表し障害者問題に一石を投ずる
1964(昭和39)年 『越後つついし親不知』、『飢餓海峡』映画化
1966(昭和41)年 『くるま椅子の歌』により第4回婦人公論読者賞受賞。『城』により文藝春秋読者賞受賞
1971(昭和46)年 『宇野浩二伝』により第19回菊池寛賞受賞
1973(昭和48)年 『風を見た人』刊行。『兵卒の 』『北国の女の物語』により第7回吉川英治賞受賞
1974(昭和49)年 『はなれ瞽女おりん』を発表
1975(昭和50)年 日本作家代表団の一員として訪中。『一休』により第11回谷崎潤一郎賞受賞
1977(昭和52)年 『金閣炎上』発表。『寺泊』で第4回川端康成賞受賞
1978(昭和53)年 『水上勉全集』全26巻(中央公論社)刊行完了
1984(昭和59)年 『良寛』により毎日芸術賞受賞
1985(昭和60)年 郷里の若狭・おおい町に「若州一滴文庫」設立
1986(昭和61)年 日本芸術院恩賜賞受賞
1988(昭和63)年 日本芸術院会員となる
1989(平成元)年 若州一滴文庫に「くるま椅子劇場」建設。中国旅行中に天安門事件に遭遇。心筋梗塞で緊急入院、九死に一生を得る
1991(平成3)年 長野県北佐久郡北御牧村(現東御市)勘六山房に庵を構え、執筆の傍ら陶芸、絵画、竹紙漉き、野菜作りなど晴耕雨読の暮らしを始める。雑誌「サライ」(小学館)に「折々の散歩道」(絵と文)の連載を始める
1992(平成4)年 第8回東京都文化賞受賞
1993(平成5)年 『花畑』を「群像」(講談社)に連載開始(〜’94年刊、’05年刊)
1994(平成6)年 『心筋梗塞の前後』『骨董の話』『醍醐の桜』刊行
1995(平成7)年 『清富記』『わが別辞』『日本霊異記』刊行
1996(平成8)年 『私版東京図絵』『一日暮し』刊行
1997(平成9)年 『新編水上勉全集』全16巻(中央公論社)刊行完了。『精進百撰』『文壇放浪』刊行
1998(平成10)年 文化功労者顕彰
1999(平成11)年 『小さな山の家にて』『説教節を読む』『泥の花』刊行
2001(平成13)年 『竹紙を漉く』刊行
2002(平成14)年 福井県民賞受賞。『虚竹の笛』で第2回親鸞賞受賞。『自選仏教文学全集』(全5巻)刊行
2003(平成15)年 ヘンリ・ミトワとの共著『辞世の辞』刊行。『たそ彼れの妖怪たち』『植木鉢の土』刊行。雑誌「サライ」に13年間連載の「折々の散歩道」を300回で終える
2004(平成16)年 9月8日午前7時16分、肺炎のため長野県東御市の仕事場にて逝去、享年85歳